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【失われた東京神学大学の倫理-今問われる教授会、理事会、評議員会の責任-】

toshindaimondai

 先ごろ、同人誌『時の徴』171号(2024年10月)が発行された。そこには前号の予告通り、東京神学学大学の元神学生Mさんによる寄稿文「東神大を信じるために、東神大の“今”を疑う」が掲載されている。寄稿文によれば、Mさんは現在、長山信夫氏(元東神大財務常務理事、現理事)、長山道氏(東神大准教授)、東京神学大学、神代真砂実氏(東神大学長)、中野実氏(東神大教授)を相手取って控訴審を争っている。

 この寄稿文では、Mさん自身が実名で、裁判を通して明らかになった事実を証言している。詳細については、『時の徴』171号をお読みいただくとして、ここではいくつかの点について、ご紹介したい。


◆事の発端


○事の起こりは、2019年のオープンキャンパス時に行なわれた、関川泰寛教授が担当した公開授業(ショートレクチャー)である。そこに、Mさんは在学生として唯一参加していた。


○当時別の学生に対するハラスメントへの対応を巡って、関川教授と対立関係にあった小泉健教授が、関川教授の言動を監視するため公開授業への参加を試みた。しかし関川教授はこれを拒否したため、渋々教室を退出した小泉教授が後日、学長に「被害届」なるものを提出した。


◆東神大が組織ぐるみでMさんを利用し、関川教授の排斥を画策


○東神大は関川教授を譴責処分にするための材料をそろえるために、Mさんに対し、神代教授(当時教授会書記、現学長)からのお願いと称して、長山道氏が自作した陳述書への署名・捺印を求めた。


○長山道氏はMさんへの「お願い」というメール(裁判所へ証拠として提出)で次のように書いている。


・「実は神代先生からお願いがあります」

・「オープンキャンパスの公開授業について教えてくださったこと(Mさん注:聞かれたことに答えただけで教えたということではない)を証言として署名と捺印をいただきたいということです」

・「秋以降の関川先生の振る舞いに対して、理事会が譴責処分を検討することになりました」

・「この書類を見るのは、伊藤理事長、芳賀学長、神代書記(と弁護士?)だけで」

・「関川先生が裁判を起こすことになったりしたら、裁判の資料として裁判所に提出されるかもしれませんが」

・「現在の問題は教授会のガバナンスが破られていることで、破っている先生に回復を期待することができないので、処分はやむを得ないと思っています」


→上記のメールから東京神学大学が一学生を利用して、問題をねつ造し、組織ぐるみで関川教授を排斥しようと企図していたことが明らかとなった。


→そもそも、教授の「譴責処分」という理事会における機密事項を一学生に漏洩していること自体が、著しくガバナンスを破っており、コンプライアンス違反である。ガバナンスが破られていることを問題にして、関川教授への譴責処分を画策している張本人が自らガバナンスを破っているのである。しかも驚くべき事は、これらのことが理事長、学長、教授会書記の主導で行なわれたということだ。


◆大学院進学、他の神学校入学を妨害


○Mさんは学校の政治的ゴタゴタには関わりたくないと、長山道氏の依頼を断った。

→このことをきっかけにして、長山道氏により、東神大においてMさんが当然有しているはずの権利と利益を侵害された。


○また同時に、Mさんの献身を積極的に勧めた長山信夫氏(当時東神大財務常務理事、現理事)が、東神大大学院への内部入学の推薦状を書く段になって、手のひらを返したように「反省文を書かなければ推薦しない」と言い始めた。結果、Mさんは大学院への進学を断念し、日本聖書神学校への入学を願って受験するも、そこでも長山信夫氏の妨害により、不合格となってしまった。


○献身の志を与えられた一神学生が、教授会、理事会によって関川教授排斥運動に巻き込まれ、心身共に追い詰められ、大学院進学への道が断たれてしまった。


○Mさんは現在本人訴訟で、東神大という組織を相手に裁判を戦っている。寄稿文の最後にMさん自身が綴っている「私にとってこの裁判は信仰の戦いなのである」という言葉が非常に印象的であった。東京神学大学は、組織ぐるみで、弱い立場にいる一学生を利用しようとしたが、思うようにいかないと、手のひらを返したように、その学生にハラスメントを加え続けた。Mさんの訴訟は「信仰の戦い」なのである。


○私たちは裁判が起こされなければ決して明るみに出されなかった事実が多数存在するということを見過ごしてはならない。


◆東神大理事会、評議員会はこのことを見過ごすのか


○以上のことは、裁判において事実として認定されていることでもある。それらは明らかなコンプライアンス違反であり、キリスト教倫理に照らしてもあり得ない事が、教団立の伝道者養成機関である東京神学大学で事実として起こっている。


○結果として組織ぐるみで、一学生の進路を閉ざし、教授を退職へと追いやったのである。


○東京神学大学教授会、理事会、評議員会はこのことを見過ごすつもりなのか。それとも、理事や評議員には意図的に正確な情報が伏せられているのだろうか。しかし、もはや「知らなかった」では済まされない。


○東神大の理事や評議員には、もう一度自らに託されている職務と責任を自覚していただきたい。


○互いに共働しつつも、理事会は教授会を監視し、評議員会は理事会を監視する責務がある。


○問題発生当初より、教授会、理事会、評議員会によって、誠実な対応が取られていたならば、ここまで大きな問題とはならなかったはずである。


○東神大の倫理は失われたのか。本気で東京神学大学の再生を願うなら、東京神学大学で起きている一連の問題に目をつむり、それを見て見ぬふりをすることなどできないはずである。今こそ、その本気度が問われている。

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