【検証】仕組債による損失とキャンパス整備
- toshindaimondai
- 7月19日
- 読了時間: 4分
更新日:7月24日
【東京神学大学はなぜ財政危機に陥ったのか】
―仕組債損失と過剰なキャンパス整備の因果関係―
東京神学大学は、ここ10年で9000万円の損失を出した仕組債投資と、十数億円規模のキャンパス整備(新学生寮・教員住宅)を実施してきました。
しかし、現実には学生数は減少傾向にあり、2025年度予算では1億円近い赤字が見込まれ、資金繰りが非常に厳しい状況に陥っています。
今回のブログでは、「仕組債損失」「基本金の取り崩し」「キャンパス整備」「財政危機」がどのように結びついているかを検証し、大学が直面している構造的な問題に迫ります。
1.国債の売却益をキャンパス整備資金に
東京神学大学は2016年、日銀の金融政策により高騰していた国債を売却し、約1億2800万円の売却益を得ました。
この資産売却の主旨はキャンパス整備(主に新学生寮・教員住宅の建設)に充当するためであると自ら公表しています。
(「東京神学大学資産管理についてのご説明」2021年6月15日)
これは、もともと安定運用を目的とした国債を手放し、短期的な資金確保に頼った投資判断でした。
2.仕組債への投資と9000万円損失
問題はその翌年、2017年に起こります。
大学は「より高利回りの商品」として、ドイツ銀行ロンドン支店発行のドル建て仕組債に6億円を再投資。
その際、SMBC日興証券発行の既存債券を5億1000万円で売却し、9000万円の処分差額(売却損)を発生させました。
大学はこの損失を「差額であって損失ではない」と説明していますが、帳簿上も実際の資産価値も9000万円減ったことは揺るがない事実です。
しかもこの資金穴を埋めるために、第3号基本金に別資金から9000万円を繰り入れる処理まで行われました。
具体的には流動資産から4000万円、減価償却引当特定資産から5000万円を第3号基本金に繰入れました。
(「東京神学大学資産管理についてのご説明」2021年6月15日)
3.第3号基本金の取り崩しと資金繰りの悪化
仕組債損失とキャンパス整備によって、大学の財政的な安全弁だった第3号基本金(元々13億円)も4億円超を取り崩す事態に至りました。
2025年現在、基本金は約8.8億円ですが、そのうち6億円は満期(2047年)まで換金できない仕組債でロックされています。
仕組債の9000万円の損失がなければ、キャンパス整備の資金不足による3号基本金の取り崩しはより少ない金額ですんだことでしょう。
結果として、大学が使える実質的な資金はわずか約2.8億円程度に縮小。繰越現金も年々減少し、2026年度中には現預金が枯渇するリスクが現実のものとなっています。
4.学生減少下での過剰な設備投資
最大の問題は、これだけの過剰とも言える設備投資が果たして本当に必要だったのかという点です。
学生数は30名を下回る学年もあり、新築した学生寮・教員住宅の利用実態は公開されていません。
「15億円にも上る費用をかけてキャンパス整備を行なって、高額な施設を建てたが、有効に使われていないのでは?」という疑問は当然のものです。
数億円かけて建てた教員住宅に関しても、なぜこれほど高価な住宅の建設が必要だったのか、費用対効果はどうだったのかという根本的な問いに、大学は正面から答えていません。
もっと安価で機能的な住宅の建設が可能だったのではないか。利用実態が公表されていないため、教員によってはセカンドハウス的に安価な家賃で利用しているケースもあるのではないか、そのような疑念すら生じさせます。
さらに根本的なことを問えば、この時代にあってキャンパス内に教員住宅を建てる必要があったのかについても検証が必要です。
そのような疑念を払拭するためにも教員住宅の利用料を含めた利用実態の公開が必須です。
結論:構造的財政危機を招いた「二重の判断ミス」
この10年あまり、東京神学大学は、
• 資産運用で高リスクな仕組債に投資し損失を出し
• 需要予測も不透明なまま十数億円規模の設備投資を行い
• 結果として基本金を取り崩し、資金の流動性を失った
という財務上の三重苦に陥っています。
そして、これらの意思決定には長期的な戦略性やリスク管理、説明責任の欠如が見られます。
学生の数の減少が財政危機の中心にあるのではなく、資産管理と設備投資の失敗がその中心にあるのです。大学によるこの検証作業の実施が求められます。
信頼回復のために今なすべきこととして、以下のことを提言します。
1.設備投資の費用対効果と利用実態の公表
2.仕組債損失を含む財務戦略の第三者による検証
3.寄付者・教会・卒業生に対する説明会の開催
4.第3号基本金の再構築と資産の流動性強化
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